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遺産分割は揉めるから遺言を書きなさい?事例紹介
遺産分割では、ほんとに仲の良かった家族もトラブルが起きます。トラブルを防ぐには、親が遺言書をつくりましょう。
では、遺産分割の注意点を知っていますか?
ポイントをみていきましょう。
1.遺産分割に期限がありますか?
遺産分割は、一般的には葬儀や四十九日が終わってから始めます。
それは、遺産分割に期限が定められていないからです。しかし、相続税の申告が必要なケースでは、10ヶ月の申告期限に間に合うように遺産分割をしなければなりません。
遺産総額が相続税を申告する必要のない金額ならば、いつ遺産分割をしても構いません。でも、早めにしないと弊害がある場合もあります。
遺産分割をしないままに相続人の誰かが死亡すれば、死亡したその人の配偶者や子が相続人(代襲相続)になるので相続の権利関係が複雑になります。何代にも渡る遺産分割は相続人も多くなり、相続人が誰かもわからなくなるケースもあります。
このように遺産分割でトラブルを防ぐためには、遺産分割を早めに済ませておくことは大切になります。
2.遺産分割前の注意点
遺産分割を始める前の注意点についてみていきます。
遺言書があるかを確認すること。
被相続人(故人)が遺言を作成してないかどうかを確認します。それは、遺言書があるかないかで、又内容によっても遺産分割の方法が変わります。
遺言書と遺産分割の方法
第一は、遺産を特定して相続させる内容の遺言書があれば、原則としてそのとおりに相続手続をします。遺言書があっても、割合を定めているだけで分割の方法が指定されていない遺産の場合には、相続人全員による遺産分割協議が必要です。遺産分割協議は、具体的に誰が何を相続するのか話し合いで決めます。
もちろん、遺言書がない場合には遺産分割協議をする必要があります。
当事務所が今までに手がけた事例をご紹介いたします。
➀-1法定相続人になれない
民法第890条では、「被相続人の配偶者は、常に相続人となる」と定められています。被相続人とは財産を遺して亡くなった方で、配偶者とは夫または妻のことです。
これは、「法律婚」による夫又は妻に限られています。ですから、「事実婚」の夫または妻は相続権がないことになります。
➀-2遺産分割協議に参加できない
遺産分割協議とは、法定相続人全員が被相続人の遺産について相続割合を話合う場のことです。つまり、「事実婚」による被相続人の妻(または夫)は法定相続人ではないので、遺産分割協議で自分の意思や意見を発言できないことになります。
➀-3「パートナーシップ証明書」では相続の権利はない
平成27年11月5日に、渋谷区と世田谷区では、「パートナーシップ制度」を導入しました。
この制度でLGBTカップルでも公的に結婚が認められ、多様性社会のなかで画期的制度として、全国の市区町村に広がりました。
この制度では、市区町村で証明書等を取得した同性婚カップルは住居の賃貸借契約をしようとして断られた場合、市区町村は是正勧告したうえで、その事業者名を公表するなどの配慮がされています。
しかし、この「パートナーシップ証明書」は残念ながら法的な根拠がありませんから法的効力はなく、法定相続人にはなれないのです。
➁-1口座凍結の解除をできない可能性がある
金融機関では口座名義人の死亡を知るとその口座を凍結し、入出金や送金ができなくなります。これは、遺産分割前に相続人のうちで預貯金を下ろしてしまうことがないようにトラブルを防ぐための処置です。
しかし、故人の葬式費用や医療費などの支払いがある場合、預貯金を下ろせないと困るので、「仮払い制度」を利用することがあります。しかし、ほとんどの金融機関では原則として相続人全員の承諾が必要となっており、相続人ではない「事実婚」のパートナーが単独で行うことはできないことになります。
遺産分割が決着した後に、口座凍結を解除できるのは、相続人、遺言書執行者、相続財産管理人、または相続人から依頼を受けた人です。
*注「事実婚」のパートナーが被相続人から財産の遺贈を受ける「受遺者」は凍結解除が可能
また、最近のネット化で通帳や証券が廃止される傾向にあります。「法律婚」カップルでも同じですが、相続の発生や認知症になったときに備えて、自分の銀行の暗証番号を伝えておくことも大切です。また、相続税の申告後に口座が発覚して税務調査や追徴課税の可能性もありますから、親族に迷惑をかけないようにしましょう。
➁-2基礎控除や配偶者控除など適用なし
相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」又は法定相続分で計算しますが、「事実婚」のパートナーは法定相続人ではありませんから法定相続人としての数に入らないことになります。
「配偶者控除」では、続財産の評価額1億6,000万円まで非課税となりますが、「法律婚」の配偶者が対象なので適用はありません。
なお、「配偶者短期居住権」については、「事実婚」のパートナー、通称内縁の妻にこの権利が認められた判例があります。また、「小規模宅地等の特例」では被相続人の自宅の土地や事業用地の相続税評価額を最大80%減額できますが、親族に限られており適用は不可となります。
事実婚のカップルがやるべき相続対策は5つ
ここまでの「事実婚」カップルの相続では、デメリットばかりと思われるかもしれません。
そこで、「法律婚」と同様の権利、生前に準備・対策することで、いざという時に対処できる方法があります。
➀生前贈与
贈与では、個人から個人へ無償で財産を譲ることをいいます。その個人は、親族に限りません。
「暦年贈与」では、年間の贈与額が110万円までなら贈与税が非課税となります。ただし、相続開始前7年以内の受遺者に対する贈与には、相続財産に持ち戻されるために相続税が発生する可能性があります。
「事実婚」のパートナーに「暦年贈与」をするならば、早めに開始したほうが良いでしょう。
➁遺言証書を作成する
遺言は、相続人による遺産分割協議に優先します。遺言証書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。
「事実婚」のカップルの住まいは共有名義の場合が多いと思います。この場合の遺言証書は強力な効果を発揮します。遺言証書があれば、被相続人の財産に相続権がある親族にも、被相続人の持分を主張できませんから親族に相続される可能性はなくなり、パートナーはそのまま自宅に住めることになります。
遺言書では「不動産●●の私の持分をパートナーの氏名に遺贈する」と書いておけばいいのです。
ただし、遺留分には注意が必要です。被相続人の親や先妻・先夫との間に子がある場合には、法で保障された「遺留分権」がありますから、「遺留分侵害請求」される可能性があります。
なお、「遺留分」は基本的に「法定相続分の1/2」ですから、パートナーの遺産が少ない場合には「遺留分侵害請求」されない可能性があります。
③死因贈与する
財産を贈与したいパートナーと生前に契約を交わしておくことで、被相続人の相続開始時に行われる贈与です。契約の証拠として「死因贈与契約書」を作成しておくと良いでしょう。
ただし、この場合でも、相続人から「遺留分」を主張される可能性は残ります。なお、「事実婚」のパートナーには、相続時に2割加算の対象となりことも忘れないで下さい。
➃「特別縁故者」の申し立て
被相続人に法定相続人がいないケースでは、被相続人の「特別縁故者」としてパートナー自身が家裁に申し立てる方法があります。「被相続人と生計を同じくしていた人」「被相続人の療養看護につとめた人」「被相続人と特別密接な関係にあった人」などの場合に申し立てをすることができます。
この方法は、被相続人の最終住所地を管轄する家庭裁判所に、「相続財産管理人」の選任を申し立てます。相続財産管理人が選任され、相続人調査が行われて相続人の不存在が確定すれば、「特別縁故者」の申し立てが認められ、遺産の全部または一部が受け取れます。
「特別縁故者」への財産分与の申し立ては、「相続人不存在の確定後3ヵ月以内」に行なわなければなりません。審判が確定するまでに時間がかかります。
⑤遺族年金や死亡保険金が請求できます
「事実上、婚姻関係と同様の事情にあった者」と認められれば、遺族年金を受け取ることができます。
国民年金の「遺族基礎年金」と厚生年金保険の「遺族厚生年金」がありますが、いずれも問い合わせ・請求先は、パートナーの住所地の年金事務所になります。
保険ですが、被相続人が被保険者・保険料の負担者である生命保険や損害保険の死亡保険金を、「事実婚」のパートナーを受取人とすれば、保険金を渡すことができます。
なお、死亡保険金の非課税枠「500万円×法定相続人の数」は、法定相続人ではありませんから適用できません。
前妻の子や認知した婚外子も遺産分割に参加する
遺産分割協議を行い遺産の分割をする場合は、相続人全員がそろって話し合うことになります。1人でも欠けていれば、そもそも協議はできません。
一般的な相続では、相続人は誰になるのかすでにわかっているものですが、遺産分割の前に原戸籍を取り寄せて確認しておくことが必要です。この戸籍謄本は預貯金の解約や不動産の登記名義人の変更などに必要ですから、取り寄せなければなりません。
ところが、原戸籍で家族関係を調べると予期せぬ相続人が出てきたりするケースもあります。
●離婚した前妻の子で相手と暮らしている子
●家族が知らない認知した婚外子
遺産分割の話合いでは、予期していない法定相続人も一緒に協議しなければなりません。
●負の遺産(借金)の調査に注意
遺産分割の話合いまでに、被相続人(故人)の遺産を調査しておくことも重要です。遺産分割の話合いが終わって、新たに遺産が出てきた場合には、もう一度遺産分割協議をしなければなりません。
被相続人(故人)の借金についてはよく調べておくことが大切です。被相続人(故人)の借金も相続人が相続しますから、借金があれば相続人は返済しなければなりません。相続放棄をすれば返済を免れることもできますが、相続放棄の期限は死亡から3ヵ月以内ですから注意が必要です。
2
遺産分割で代理人が必要な場合
遺産分割協議では相続人の全員が協議に加わる必要があります。しかし、色々な事情で参加できないケースもあります。
次の事情で相続人が遺産分割協議に参加できない場合には、代理人が話合いに参加します。
●相続人が未成年
●相続人の判断能力が不十分(認知症や精神障害など)
●相続人が行方不明
*遺言書のとおりに相続する場合は、遺産分割協議をしないので代理人の選任は不要
●相続人が未成年
未成年者は法律上遺産分割協議に参加することができません。相続人に未成年者がいる場合には、代理人が遺産分割協議に参加することになります。
未成年者の代理人に誰がなるのか。それは、未成年者の親権者が務めます。しかし、親権者も相続人の場合には、代理人になることはできません。親権者が遺産分割協議で自分の利益を優先して、子の利益に不利になる恐れがあるからです。
●相続人の判断能力が不十分
相続人が認知症や精神障害などで判断能力が不十分な場合は、代理人が遺産分割協議に加わります。このように判断能力が不十分な相続人の代理人は成年後見人がなります。成年後見人の選任は家庭裁判所に申立てます。
すでに親族が成年後見人を務めている場合には、遺産分割のための代理人として特別代理人を選任しなければなりません。なお、成年後見監督人がいる場合は成年後見監督人が代理を務めるため、特別代理人の選任申立てをする必要はありません。
●相続人が行方不明
相続人が行方不明の場合は、戸籍の附票などを取得して探し出します。しかし、相続税の申告期限が迫っている場合など遺産分割を急ぐときは、不在者財産管理人を選任して遺産分割協議を進めます。
長期にわたって相続人が行方不明の場合や災害で生存の見込みがない場合は、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てます。失踪宣告の審判が出た場合にはその相続人は死亡したとみなされ、相続の権利は子などに移ります。
相続分の調整が必要な遺産分割
遺産分割は、法定相続分をもとに相続分を決めます。ただし、法定相続分で遺産分割をすると不公平になる場合があります。
1.多額の生前贈与を受けた相続人
2.被相続人に貢献をした相続人
次のような法定相続分で遺産分割することが不公平の場合があります。遺産分割で相続分の調整が必要になります。
1.多額の生前贈与を受けた相続人
被相続人から多額の生前贈与があった相続人は、特別受益として特別受益があった相続人とそれ以外の相続人で公平に相続分を調整します。
特別受益分を相続財産に持ち戻し相続人の相続分を決定します。特別受益があった相続人は、本来の相続分から特別受益を差し引き遺産を受け取ります。
なお、被相続人が遺言で特別受益分の「持ち戻しの免除」を表明していれば、その財産は相続財産に持ち戻さずに相続を行います。例として結婚20年以上の夫婦間では自宅を生前贈与または遺贈した場合には、自宅は相続財産に持ち戻さないことになりました。
介護などで被相続人に貢献があった相続人
被相続人の介護などで多大な貢献をした相続人は、その貢献に見合った額の遺産を寄与分として相続分に割り当てることが認められます。
この貢献には、介護のほか借金の肩代わり、事業の手伝いなども寄与分として認められます。
相続税の負担について考慮
遺産分割で相続人が負担する相続税について考慮するケースも必要です。特例の適用で節税するのであれば、相続分を調整する方がよい場合もあります。
相続税の申告で配偶者の税額軽減を適用すれば、ほぼ配偶者に相続税はかかりません。配偶者が多くの遺産を相続して節税できますが、次に配偶者が死亡したときの二次相続で子が負担する相続税は多くなるデメリットもあります。
被相続人と同居していた子は、実家を相続すると節税になります。小規模宅地等の特例の適用を受けることができるので、実家の土地の評価額が最大で80%引き下げること適用を受けられます。
これらの特例を活用した場合に、どのように遺産分割すれば最も税負担が軽減されるかについては、相続相談福岡センターにお気軽にご相談下さい。
特殊なケースは専門家に力を借りること
遺産分割をするときの注意点をご紹介しましたが、分割方法を指定した遺言書がある場合以外では、相続人が話し合って遺産分割をします。
相続人全員で分け方を話し合うだけなので難しいことではありませんが、遺産分割に参加できない相続人がいる場合には、代理人の選任が必要なケースや、被相続人の介護をしていた相続人がいる場合には、特定の相続人が被相続人から多額の金銭的援助を受けていた、などの事情で相続分の調整が必要なケースでは、難しい手続きが必要だったり、時には争いに発展する場合もあります。
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